近藤忠義税理士事務所

事 業 承 継

事業承継とは、会社・事業の経営を現在の経営者から後継者に引き継ぎ、株式を譲渡することを一般的に意味しています。
この事業承継には、「経営の承継」と「株式の承継」という2つの側面があり、「経営」と「株式」が承継されて初めて、事業承継の成立となります。

事業承継における最大の税問題は相続税でした。以前はこれに所得税、法人税の知識があれば事足りたのですが、会社法の改正や経営承継円滑化法の導入などにより、様々な事業承継のスキームを構築できるようになった現代においては、税務の知識はもとより、種類株式等や組織再編税制等に係る幅広い知識と経験が必要になってきています。

事業承継支援

 

◆ 経営の承継
会社経営者としての地位を承継することであり、会社の経営方針や体制、従業員、取引先、顧客等を全て承継するものです。
中堅・中小企業は、オーナーの親族が後継者になる場合が多く見られますが、後継者の能力・経験等が不足しているために会社の業績が悪化するケースも少なくありません。
そこで考え方を柔軟にし、経営はその職責に最適である者にその職務を行わせることにし、自らの血縁には、その事業から得られる収益を享受できるようなスキームを検討する事もありうることを知る必要があります。
◆ 株式の承継
会社の所有を表す株式の譲渡を意味します。
後継者が実質的に経営を引き継ぐためには、経営者の地位だけでなく、会社を所有するために、株式を取得する必要があります。
役員・従業員への承継を考える経営者は少なくありませんが、株式の買い取り資金や、銀行借入等の個人保証の引継ぎの問題で頓挫するケースが数多く見受けられます。

 

事業承継の方法

「事業承継」は、会社の「経営」と「株式」の承継を、セットもしくは別々に行うことですが、事業承継には、いくつもの選択肢が考えられますが、それぞれの特徴を把握して、最も適切な方法を選択・実施すること重要です。

 

1.世襲(相続等)
世襲は、事業承継の手段として、多くのオーナーが考える最も一般的な方法です。親族に十分な経営能力を兼ね備えた後継者候補がいる場合、関係者からの理解も得やすい方法です。
しかし、近年では、血縁関係であることのみで承継させる慣習が薄れてきていることや、その他様々な理由で、親族への承継が円滑に進まない例も多くなっています。また、株式を複数の親族に承継した場合、経営権が分散されることで、内部対立の火種になってしまう不幸な事例も数多く見受けられます。
2.株式上場(IPO)
株式の上場(IPO)は、資本と経営の分離を実現し、後継者問題の解決や従業員の保全を図れるという点では理想的な手法といえます。しかし、日本国内に250万もの法人が存在する中で、株式上場を果たしている企業は僅かに約4,000社しかありません。
以下にあげる要因からも、国内で、0.2%弱しかない上場企業に仲間入りすることは、どれだけ困難なことか十分に認識する必要があります。 株式上場を考える上での懸念事項を整理すると以下の通りです。
  • 新興市場の低迷による資金調達力の低下(上場メリットの毀損)
  • 旧経営陣への訴訟リスクの増大、J-SOX法の施行など、上場企業に対する監視の強化
  • 上場基準の厳格化
3.内部昇格
内部昇格では、その会社の置かれた外部環境や事業内容に精通した人材を登用するため、円滑な承継が期待できる上、従業員のモチベーション上昇にもつながります。
しかし、オーナーの資本の承継をするためには、株式の買取資金が必要になると共に、個人保証・担保の設定等の障壁があり、頓挫するケースがほとんどです。 また、資本の承継がなされない場合は、オーナー一族と経営者側で将来対立する可能性も残されます。
4.MBO
MBOは、会社の内容や事業環境に詳しい経営者や従業員が、オーナーから株式を買い取ることを言います。オーナーは、創業者利益を金銭で確定し、個人保証なども解除することが出来るメリットがあります。 しかし、現実には、オーナーの保有する株式を取得するだけの財務基盤を持ち合わせた経営陣がいることは少なく、多くはファンドや金融機関と連携して株式を譲り受けることになります。 MBOを共同で行うファンドなどのパートナーは、企業の業績や見通しに対する見解がシビアで、よほどの強みを持った会社でなければ、実現は難しいものと言えます。
5.M&A
M&Aは、経営主体・株主ともに第三者へ承継するものですが、中小企業においても近年急激に増加しています。かつてはM&Aというと「会社を見捨てる」と敬遠されてきたものですが、そういったネガティブなイメージは時代の変遷とともに淘汰され、近年では、M&Aによる事業承継のメリットがクローズアップされています。
M&Aのメリットには以下のようなものが上げられます。(売却するメリット)
  • 創業者利益の獲得&個人保証の解除
  • 従業員の安定的雇用・取引先の継続
  • 企業の成長加速・事業価値の向上
中小企業の事業承継の問題点